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社団法人全国石油協会はこのほど、長野県石油協同組合(渡邉一正理事長)との共催で石油事情普及講演会を開催しました。東洋大学経営学部経済学博士の小嶌正稔氏を講師に迎えて、「石油業界の展望と課題・次世代SSビジョン」をテーマとする講演を聞き、次世代のSSに向けた経営者への提言に、熱心に耳を傾けました。講演要旨は次の通りです。
次世代のSSビジョン。次世代とは一体何なのか。次世代というのは現代の常識が通用しないほど、大きな環境変化が現実に起こってくる時代と思っています。次世代とは「既に起こった未来が、今我々が考えている未来自体が本当に現実になる時代」ととらえていただければと思います。この中で、経営者の仕事は非常に難しくなり、経営者の皆様の力がそのまま会社の力に反映するようなストレートな時代がやってきました。次世代とは経営者の時代だと言ってもおかしくないと思っております。経営者の役割として日々の成果を上げることは大切なことですが、とにかく重要なのは潜在的な機会を発見していくことであり、明日のためにどのような新しい事業を開発、開拓していくのかが経営者の重要な仕事であろうと思っております。では、今日お話しさせていただきます次世代について、6つのポイントを挙げさせていただきたいと思っております。
まず、(1)次世代自動車の普及から見た次世代です。昨年の5月に環境省が出した自動車の普及戦略によると、「ストックベース」いわゆる走っている車で、2020年には25%位の車が、2030年には50%、2040年には70%位の車が次世代自動車と呼ばれるものになるだろうと予測をしております。具体的に次世代と言われる自動車がガソリンの消費に与える影響は、例えば2020年の段階では全体で27%のガソリンの消費が減ってしまうわけです。その殆どは保有台数の減少と燃費の向上によって20%減少します。それに、次世代の自動車が7%位上積みをかける形で、全体として27%位の減少が起こるだろうと言われております。これが2030年になりますと、45%、2040年になりますと55%減少となり、同じく、その殆どが保有台数の減少と燃費の向上というのが1番大きな影響を与えていきます。
もっと重要となるのは、(2)環境規制から見た次世代であり、これが1番大きな影響を与えるでしょう。EUは2020年までにCO2の排出基準を1kmあたり95グラムにしなさいという指令を出しました。プリウスは1km当たり98グラム、インサイトは101グラム排出しており、ヨーロッパでハイブリッドが伸びないのは、95グラムの基準をクリアしていないことも理由の1つです。それよりもガソリン車の燃費の向上が非常に大きくなってくるだろうと言われており、少なくとも2020年には全ての新車が、普通のガソリン車が、現在の本田のインサイト並の燃費を実現することになります。そうなると、2020年にガソリンの消費が一気に40%まで減少してしまいます。そういう意味で、この環境規制というのが実は、石油業界からみれば最も大きな、EV以上のインパクトを与えて行くだろうと思います。
(3)セルフの普及から見た次世代ですが、セルフSSは20%弱まで伸びてきており、SS当たりの販売量がフルの3倍だとすると、既にガソリンは60%以上がセルフのSSを経由して販売されている状態になっています。セルフの給油率が80%まで伸びるということは間違いなく、セルフの市場とフルの市場が分離するという状況になります。現在1SS当たりオールジャパンで75klの販売を保っておりますが、需要が減っていった場合、フルSSの減少を予測すると、オールジャパンで仮に56kl位の販売量を保つとするならば、43%の削減率で17,000まで減っていきます。セルとフルの販売力の差は、15年度に出てきたときは4倍でした。これが16年度になりますと、セルフSSが急に増え、比率が2.97倍になってきましたが、最終的には4.5倍以上の数字になっていきます。理由は簡単で、セルフが伸びていくよりも、フルSSの販売数量が減っていき、結果的に残存するフル1SS当たりと、セルフ1SS当たりの販売数量の差は間違いなく大きくなっていく。4倍になるのはあと数年かからないだろうと思っております。ただし、それによって販売比率、販売量自体が伸びていくかというのは全く別の問題です。
(4)施設要因から見た次世代でございます。非常に古い、40年、50年以上のような地下タンクが相変わらずたくさんあります。実際にSSにおける漏洩事故は増加しつつあり、2000年を100としますと、2008年には165%になっております。SSの老朽化自体が厳しい状態になってきているのは明らかです。65%も伸びていることが見て取れるわけですから、決して猶予しているような状態ではないのが確かだろうと思います。古い一重殻のスタンドが地下タンクを替えていかなければならないとしますと、全体の55〜60%の給油所が2020年までの間に地下タンクの投資に関する意志決定を迫られます。このうち35%が設備投資をし、セルフを採択する。それ以外の方々が撤退するとしますと、フルSSの削減率は43%、販売量は30%減少することになります。需要減だけでなく地下タンクから見ても、もしこのまま業界自体が再投資の対象とならないとすれば、間違いなく43%のSSは業界から退出していく可能性があるわけです。
(5)事業承継から見た次世代ですけれども、石油情報センターのデータによりますと、半数の48%が事業承継に否定的であります。事業承継しないということは、地下タンクの投資をしないということです。次世代のSSまでに撤退してしまおうと考えている。逆に半数の方が投資をし、事業承継していこうとすると、その方々が次世代SSの担い手になってくるだろうと思っております。
そして、(6)元売システムの次世代。今までは相互補完的に進められ、全国をカバーしてきたわけです。しかし、これだけどんどん余ってくるとどうなるかというと、同じ所に製油所を持っている者同士が一緒になることで、どちらかを閉鎖し余剰処理的な再編が起こるだろうと申し上げてきました。まさしくJXというのは余剰処理が全面的に出ている訳です。そうしますと、これからの精製元売は売れる分だけ造るしかないわけです。しかし、余剰になれば販売攻勢をかける、不足になれば販売抑制をするという姿勢が変わっていません。JXになったときに、もし経営者に普通の経営感覚があれば、どちらかのブランドを残すなどという発想はしないはずです。今の両社の看板を残し、その中で、「最も優秀なSSだけ新しい看板を掛け替えましょう」と発想していくのが、おそらく次世代を生き抜く元売の姿だろうと思います。また、製販の一貫体制というのが一般的には限界になり、精製と販売を分離して独立させていくことが通常の姿です。需要の減少が経常的であれば、絶えずこれから精製設備をどれだけ減らし続けていくのかが問題となりますから、販売と精製を一体的に考えていけば必ず壁にぶつかる訳です。大精製販売から精販分離へ、そして分散へというかたちで将来的には進んでいくと考えております。
では、次世代発想への9つの転換を提案します。1番目として、最初に何をしていただきたいかと言いますと、「何を提供して、何を提供しないのか」ということを是非お決めいただきたい。自分のSSの顧客、市場の特性を把握するところから始めて、顧客の意識と行動分析を1度是非してみては如何かと思います。お客さんを理解して、自分はどういう業態を選んでいくのか。お客さんに対して、どういうサービスを選んでいくのかというところからスタートするべきだと思います。「自分のSSの前を通る車は全て自分のお客」という発想をしていますと、消費者と顧客の間に何も差が無くなり、競争結果を決めるのは、顧客ではなくて、同業他社という発想になっていきます。これが今までのSS間の競争の前提になり、品質も価格も販売方法も同じだから、価格に注目せざるを得なくなってしまうのです。価格とは自分たちの会社の利益を決める最も重要な物であるのですが、その価格をコントロール出来なくなってしまい、結果的に消耗戦に巻き込まれてしまうのが現在の状況です。だからこそ、まず1番最初にやらなければならないのは「消費者」と「顧客」をどうやって分けて発想していくのか、というところから発想の転換をしていただきたいのです。
次世代発想への転換の2番目ですが、セルフとフルの格差を積極的に活用する。セルフの強みは規模の経済性を追求するけれども、1人1人の情報をうまく分けられる用になってきたことです。これに対し、フルの強みは何かといえば、適正規模です。大きいことがいいことはセルフの世界です。フルは、適正な規模があるからいいのです。だからこそOne to Oneマーケティングが出来る訳です。そうすると、セルフとフルのお互いにある格差を活用しながら生きていくことが重要になってきます。勿論、セルフSSのフル版、フルSSのセルフ版は全く相手になっていかないと思います。
次世代発想への転換の3番目ですけれども、マージンとプロフィットという考え方です。実はマージンという考え方は何かと言いますと、メーカーが利益を上げた残りなのです。ですから、マージンという意識を持つ限りは、どこかにメーカーに対する依存が隠れています。それに対して、自分のお客さんに接することによって作り上げてきた価値がプロフィットになっていくわけです。そういう意味で、マージン的な発想から、自分でどうやって価値を作り出すかというプロフィットの発想をどうやって全面に出して会社を運営していくのかが重要になっていくと思います。
次世代発想への転換の4番目ですが、顧客のライフタイムバリュー(LTV)を意識し、顧客との継続的な環境をどうやって維持するのかを考えていただきたい。これは、セルフでもフルでも変わりませんが、フルでは生命線と行って過言ではないと思います。全ては顧客のLTV。この売り方で、この接し方で一生涯自分のSSとおつきあいいただけるのだろうかと考えていただきたいと思います。その時によく言われるのが顧客満足です。今時、顧客満足と言われない業界はありませんが、「顧客満足とは何ですか」と言われて、従業員全員が「自社の顧客満足とはこれです」と、きちんと見せることが出来なければいけません。全ての従業員が「うちの顧客満足はこれです」と言うことができれば、結果的に方策となり、顧客満足を消費者の皆様に提供出来ていると思います。
次世代発想への転換の5番目は、「油外収益からプロフィットセンターの構築へ」です。実は、現在の油外で扱っている一つ一つの商品は油外ではなく、全てがプロフィットセンターであり、いかに収益を上げていくかというビジネスモデルの1つです。次世代SSは「いかに新しいビジネスモデルを作っていくか」がビジネス存続の鍵になります。ガソリンの需要が減少したときに収益をつくるには、やはり新しいビジネスモデルを作っていくしかないのです。新しいビジネスモデルを考える時にはSSから完全に離れて顧客の視点から考えていただく必要があるだろうと思います。顧客の視点から物を見るということは、顧客にならなければいけません。次の時代がどうなるかと考えるためには、自分自身が経験するしかないのです。誰にも聞けません。何故かといえば、次世代の顧客はまだどこにも居ないからです。
次世代発想の6番目ですが、今までは、1つ1つのお店が、「消費者の信頼を勝ち取るための競争」をしてきたのだと思います。しかし、これからは信頼を獲得するだけではなく、「消費者の期待を獲得する競争」を続けていくことができるかが1つの鍵になるだろうと思います。これからは、系列間競争に加え業態間競争が入ってくるだろうと思います。社会のインフラとしてのSSが勝っていくのか、社会のインフラとしてのコンビニが勝っていくのか。次世代の燃料供給拠点としてのネットワーク優位性の戦いが、まさしく始まっているのだろうと思います。そういった意味では消費者に対する社会インフラ期待の戦いと考えていただいていいと思います。
次世代発想への転換の7番目として、ネットワーク間インフラ期待競争のための意識転換があげられます。元売の姿勢にネットワーク意識は、個人的にはないと思います。元売にネットワーク優位性のための商品開発力はありません。1960年代に行ったアンケートで「SSに期待されているもの」はじつは何一つ実現されておらず、その全てをコンビニエンスストアが実現していることからも伺えます。また、元売に系列内相互利益の姿勢は、もはやありません。新価格体系を作った段階で、この姿勢を断ち切らなければ、精販ともに生きていけない状況になりました。逆に、系列店に系列内相互利益の観点があるかというと、これも非常に難しい状態になってきている。そうすると、系列外競争と同様に異業態競争のためにネットワークを一体誰がリードしていくのかが非常に重要となります。1つ1つのお店の努力と、地域で行う努力。地域のネットワークの努力をきちんと示していく必要があります。石商を中心として、業態間競争に勝つために、地域のSSが果たしていく役割が何であるかを考えていくべき時期にあるのではないでしょうか。
次世代への発想の転換の8番目は、「コストとしての人材」から「経営資源(プロフェッショナル)人材へ」です。新しいビジネスモデルを是非考えてくださいと申し上げておりますが、同時に、如何にビジネスモデルを支えていく人材を育成していくのかが非常に重要になってきます。経営目標の共有化をして、キャリア・デベロップメントを実行する必要があります。理由を教えれば自動的に動いてくれる人をどうやって育てていくかが重要になります。経営の最大の役割とは、一言でいえば、自分で仕事をすることではありません。経営の真髄は、「人を通して仕事をしていただくこと」です。そのためには、仕事をしていただく「人」を育てなければいけません。
次世代発想への転換9番目は、「成長」から「発展」へ。今までの経営の考え方というのは、「成長」を考えてきたわけですが、需要が大幅に減少している時代に最も重要なものは、「成長」ではなくて「発展」という概念です。では、「発展」という概念は何か。たとえば、会社に「人・物・金・情報」という経営資源が足りないとします。経営資源は小さい。しかし、自分の経営にとっては、なんら制約要因にならない、その経営自体が「発展」という概念になっていくのだろうと思います。ぜひSSの総力を挙げたインフラ整備をしてください。顧客の顔の見えるネットワークは、次世代に大きな優位性を持つことができるだろうと思います。顧客をつなぐ「ハブ」の役割を任せられるSSネットワークをどうやって作っていくのかが重要になってきます。そのためには経営の「成長発想」から「発展発想」へ大きな発想の転換をしていただきたいと思います。
これからの経営していく上で、どうしても暗い話題が多いわけです。しかし、こういう時代だからこそ、世の中の流れがどう進んでいるということと同時に、やはり自分たちの会社がどちらに向かっているのかを考えていただかなければいけないと思っております。経営の3つの目(「虫の目」、「鳥の目」、「魚の目」)というのがあります。「虫の目」とは、まるで地を這うように現場を徹底的に知り尽くす目です。しかし、鳥のように上から全体を見ていく「鳥の目」が必ず必要になってくるだろうと思います。そして、世の中の流れが非常に激しい時期には「魚の目」が必要です。魚のように川の流れを使いながら、自分たちの舵取りをしていかなければなりません。しかし、間違えてはいけないのは世の中の動きを追いかけることです。川に流されてはいけません。だからこそ、経営者が経営者として自分自身の立ち位置を持ち、従業員を引っ張っていくことが何よりも重要になってくるだろうと思います。
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